トレス・デル・パイネ国立公園のトレッキング情報
毎年、世界中から10万人ものトレッキング客が訪れるパイネ国立公園は、パタゴニアトレッキングの目玉と言えます。日帰りトレッキングを楽しむ方もいれば、テントを背負って『Wサーキット』と呼ばれる3泊4日コースを制覇する方もいらっしゃいます。
ここでは、そんな、パイネトレッキングの幾つかのパターン、難易度などをご紹介。トレッキングをしてみたい!!・・・という方は是非ご参考ください。
トレッキングルート
ラス・トーレスコース(Base Las Torres)

公園の名前にも冠されている、トーレス(花崗岩の3本塔)の麓まで歩く一番人気のトレッキングルート。青い湖を見下ろしながらの丘陵越え、谷川の清流を聞きながらの尾根越え、冷んやりとした森林のハイキング、そして最後は見上げんばかりの岩場越え・・・と見所には事欠かないコースです。日帰りコースの中では、最も変化に富んだ景色を持ち、同時に天候も変わりやすいルートであるため、難易度は中の上となります。
プエルト・ナタレスの街から日帰りでトレッキングするのは、不可能ではありませんが強行軍となりますので注意が必要です。出来れば、ラストーレス地区で前泊するのが良いでしょう。プエルト・ナタレスからのバスが公園に入るのは午前10時ごろ、プエルトナタレスに向かう最終バスは午後8時頃となる上、トレッキング開始地点とバス停留所は2km弱離れていますので、時間に余裕を持つことが重要となります。
出発地点と到着地点の標高差 | 約+820m |
出発地点と最高高度地点の標高差 | 約+820m |
平均所要時間(往復) | 約7時間 |
道程距離(往復) | 約19km |
[地図 ❷]
グレイ氷河コース(Glaciar Grey)

ペオエ湖西岸のパイネ・グランデ山小屋の辺りから、氷河で有名なグレイ湖の右岸に沿って歩くコースです。常に左手にはグレー色の氷河湖、右手にはパイネ最高峰のパイネグランデ山(3050m)を望むトレッカーを飽きさせないコースですが、氷河の上を吹き抜けてくる風は想像以上に冷たいので、しっかりとした防寒が必要となります。グレイ・キャンプ場まで着けば、南パタゴニア大氷原から流れ出るグレイ氷河はすぐ目の前。一部、一気に300m近く登る箇所がありますが、全体的なレベルは中程度と言っていいでしょう。
日帰りをするにはパイネ・グランデ山小屋での前泊が理想です。プエルト・ナタレスからの日帰りは、ペオエ湖を横断するカタマラン船の運行時間の都合もあり(18時にはペオエ湖西岸の乗船場を出発)、難しくなります。グレイ湖からの風は冷たく強いので、手袋、ウインドブレーカーなどは忘れずにご持参下さい。
往復で同じルートを歩きたくない方は、往路4時間をトレッキングし、復路は16時頃やってくるグレイ湖氷河クルーズ船に乗り、船でグレイ湖岸まで戻ってくるという手段もあります。事前に予約をする必要がありますが、多くのトレッカーに人気が高い方法でもあります。
出発地点と到着地点の標高差 | 約+50m |
出発地点と最高高度地点の標高差 | 約+250m |
平均所要時間(往復) | 約8時間 |
道程距離(往復) | 約22km |
[地図 ❺]
フランス谷コース(Valle Frances)

出発地点はグレイ湖ルートと同様、ペオエ湖西岸のパイネ・グランデ山小屋となります。ペオエ湖を右手に見ながら、なだらかな傾斜の草原を越えるとフランス谷の雪渓から流れ出るフランス川に出ます。その後、今度は左手にフランス川の清流と雪渓を見ながら岩場登りとなります。フランス氷河の軋む音、崩れ落ちる音を聞きながら、ブリタニコキャンプ場までたどり着けば、パイネを代表する3つの鋭鋒、ラス・トーレス、ロス・クエルノス、パイネ・グランデのパノラマが広がります。難易度は中の上。時間的制約がある場合は、途中のフランス谷展望台で引き返すこととなります。
プエルト・ナタレスからの日帰りは不可能で、パイネ・グランデ山小屋での前泊、早朝の出発が理想です。ラス・トレスベースと並んで人気、難易度とも高いルートです。アプローチが長い分だけ、ラス・トレスベースよりもトレッカーの数は少ないのが特徴です。
行程を2日に分けてノンビリとハイキングする旅行者も多いですが、その際はルート上のイタリアキャンプ場でキャンプすることになります。山小屋隣接のキャンプ場ではないので設備は期待できないため、事前にしっかりとした荷物を準備することとなります。
出発地点と到着地点の標高差 | 約+550m |
出発地点と最高高度地点の標高差 | 約+550m |
平均所要時間(往復) | 約9時間 |
道程距離(往復) | 約26km |
[地図 ❹]
W(ダブリュー)サーキット

パイネ連山の南壁に沿って、ちょうどアルファベットの【W】の形で平均3泊4日で踏破するルートです。西側のグレイ湖ルート、東側のラス・トーレスルートのどちらからも始めることが可能で、手ごろな日数でパイネの醍醐味を満喫できるため日本人、外国人問わず非常に人気の高いルートです。天気さえよければ素晴らしい景観が約束されます。東側から始めた場合の行程は下記の通りとなります。
- 1日目 ラス・トレス・ベース往復(山小屋もしくはテント泊)[地図 ❷]
- 2日目 ラス・トレス地区~ロス・クエルノス(山小屋もしくはテント泊)[地図 ❸]
- 3日目 ロス・クエルノス~フランス谷経由~ペオエ湖西岸(山小屋もしくはテント泊)[地図 ❹]
- 4日目 ペオエ湖西岸~グレイ氷河往復~プエルト・ナタレスへ戻り[地図 ❺]
山小屋の予約さえ取れていれば、全行程を通して山小屋泊が可能であり、テントを背負う必要はありません。但し、ハイシーズンの山小屋は非常に予約が難しいため、日程が決まり次第、早目の予約をお勧めします。
最初からテント泊覚悟の場合は、テントだけはできれば日本からお持ち頂くことをお勧めします。日本の軽量高性能なテントは、現地での購入が難しいですが、シュラフやストーブなどはプエルト・ナタレス、プンタ・アレナスでも購入可能です。
ラス・トーレスベースの往復、フランス谷の2箇所に一部急坂(岩場)を含む箇所がありますが、それ以外で難易度の高い箇所はありません。
出発地点と最高高度地点の標高差 | 約+1000m |
平均所要時間 | 約4日間 |
道程距離 | 約76km |
パイネ連山大周遊(Macizo Paine)

パイネ連山をダイナミックにグルッと一周してしまうコースです。最短所要日数は7日ですが、公園管理事務所は10日間の日程を推奨しています。
Wサーキットは人気も高く、道中で頻繁に他のトレッカーとも出会いますが、連山北壁側はこの大周遊コースに挑戦する登山者のみで、行き交う人もまばらです。当然、宿泊施設も貧弱であり、荷物装備は万全の準備が必要となります。
2005年のパイネ山火事で消失した地域が一部含まれており、足場の悪いルートも含むため単独行は厳しく規制されていますので、熟練したガイドの同行が望まれます。ひと気の無い登山道を好むトレッカーの多くが推奨するコースですが、中級程度のトレッキング経験者は事前に管理事務所に出向いて念入りな情報収集、無理の無い計画を立てることが必須です。
出発地点と最高高度地点の標高差 | 約+1250m |
平均所要時間 | 約8日間 |
道程距離 | 約93km |
トレッキングの際の注意点
パイネ国立公園にてトレッキングを行う場合は次の点にご注意ください。
- 公園内で宿泊される場合、事前に山小屋およびキャンプ場の予約が必要です。
- 指定された場所以外での火の使用は厳禁となっています。
- 日帰りトレッキングでも単独行はレンジャーより注意を受ける場合がございます。ガイド同伴が理想ですが、ガイドを付けない場合は出来るだけ同行者を探されることをお勧めします。
- アマルガ湖沼以外の公園内流水は飲用可能です。
- 標高は最高点でも1300m弱ですが、天候、気温の急激な変化、また強風による歩行困難などが国立公園内では度々起こります。無理せずに引き返すことは恥ずかしいことではありません。
- 日本と違い、如何に悪天候時といえども予約が無い限り山小屋は宿泊させてくれません。ご注意ください。
- 野生動物に触れたり、餌を与えるなどの行為はお控えください。
- 決められたルート以外は絶対に踏み入らないでください。
- 怪我や急激な体調変化などで継続が困難な場合は、すぐに周りの人に頼んでレンジャーに連絡してもらうことをお勧めします。
- 日没時間までにその日の行程を終えられるよう、時間には余裕を持ちましょう。
- 氷河上を歩くトレッキングは個人、グループを問わず、専門ガイドの同行が義務付けられています。アイゼンを装着しますので、ヒールのない靴を着用ください。(スニーカーで可)